人生100年時代と言うけれど…

 初めてのブログ、さてテーマは何にしようか?やはりよく目にするこのフレーズを取り上げてみましょう、「人生100年時代」です。今や長い人生を著す枕詞としてすっかり定着した感があります。確かに2023年末現在日本人の100歳(センテナリアン)は92,139人で、1963年当時の153人の約600倍に増えています。80歳の平均余命をみても男性9.22年、女性12.12年と少なくとも90歳代までは生きることについて十分想定しておくことは頷けるところです。

 このフレーズ、お金に関して言えば長生きをリスクと捉えてしばしば用いられています。「生きている間にお金が尽きませんか」ということです。現代社会ではお金は生きるうえでやはり大切なのは疑いようもないですが、あくまでお金は生きるうえでの手段、道具です。ビル・パーキンス著「DIE WITH ZERO」の中でお金がちょうどゼロで死ぬのが理想としているのは、お金は人生の目的でないという考えが底流にあると思います。ただ頭でそうと理解はしていても、ぎりぎりの残高でやりくりするのはやはり恐いので、大抵はいくばくかのお金を残して人生を終えることとなります。

 問題はこのフレーズを金融機関が使用する場合、自社商品の販売促進のため過度に長生きリスクを煽ることにあります。特に人生の正午と言ってよい50歳を超えると、この問題はずしりと重くのしかかります。今は余裕があっても大病を患えば治療に大変でしょうとか、事故に遭遇し想定を超える出費に直面したら一気に困窮するとか…考え出すと不安だけが増幅し、きりがありませんね。

 長生きリスクのお金は次のように不安を解消するのが王道とよく言われています。資産の現状把握、将来収支予測、必要額算定、そして最後に対策です。ゴールベースアプローチという考え方です。この手順でいちばん注意を要するのが二つ目の収支予測です。予測の匙加減で必要額がブレてしまうのが厄介なところですが、ここは予測のしやすさ(自分の恣意性が高いか否か)といった点を考えれば少し整理できます。就労や年金収入、税金・社会保険料の支出は比較的予測しやすい一方、資産運用や日常生活費や非日常のライフイベント支出は難しいかもしれません。

 ここで二つのポイントはおさえておくべきと心得ます。一つは公的補助、セーフティネットです。終身の公的年金制度や高額療養費などの上限負担額に代表される健康保険・介護保険の補助は、日本ではその金額に議論の余地はあるにせよ国民にかなり恩恵をもたらしています。もう一つはダウンサイジングです。いつまでも健康でありたいと願いますが、年齢と共に少しずつ活動は衰えていくのが生物である人間の定めです。人生の終盤には支出も減っていく縮小均衡になるのが普通と言えます。もっとも詳しいライフプランシミュレーションはファイナンシャルプランナーに試算することをお勧めしますが、案外何とかなると楽観視してもよいかもしれません。ただ、以上のことを考慮したとしても厳しいケースはあります。そこで頼るべきは民間の知恵、商品・サービスとなります。ここで顧客に忠実で、金融機関のしがらみから中立なプロのアドバイザーの存在意義が問われるわけです。

 次にキャリアの面から人生100年時代を考えてみましょう。ここでは長生きはお金とは真逆で、リスクではなくチャンスと捉える傾向があるように思います。「還暦を迎えたがまだまだ元気、これからは好きなことをするぞ」という場面はよくありそうですが、本当に実現させるためにここは時間軸で考えてみましょう。つまりそれは過去を振り返り、未来を希望し、そして現在を懸命に生きる、です。過去の振り返りとは経験・記憶の丁寧に紐解き掘り起こし、これら経験からどういった感情を抱いたのか、どういう学びがあったのか、そしてどう意味づけて評価するのかを考えることです。大切なのは最終的に言語化することです。これを初めて意識して行うのがおそらく新卒就職活動時でしょう。自分という人間は何者か、どういう性格でどういった価値観・モノの見方を有しているのかといった自己分析です。大切なのは過去の経験した事実は変えられませんが、意味づけや評価は変容していくということです。そして常に今を基点にしていることです。そこから生きる方向性を見い出していきます。未来の希望についてはいわずもがなでしょう。しっかり到達点を定めて、それへ向けて努力するためには、これもやはり今どう行動するかが基点となります。この振り返りは無意識に行っている人もいますが、意識して行うとより深みが増します。

 時間軸という点でもう一つ考えたいのは、齢をとるほどに時間の流れが速く感じられることです。19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネーが発案したとされる「ジャネーの法則」と呼ばれるらしいですが、「光陰、矢の如し」の方が親しみやすいですね。でもなぜ速く感じられるのか、理由の一つとして挙げられているのが、「大人にはトキメキがない」からという説があります。最近NHKの「チコちゃんに叱られる」でも取り上げていました。子供の頃は見るもの、聞くこと、行うこと一つひとつが新鮮で感情の起伏が激しかったのが、大人になると現実が見えてしまうからか、変に達観してしまうからか、多くの方はそうした感情の起伏が薄らいでいき、漫然と一日を過ごしてしまう。確かにそうだなあと私も感じます。ここでも過去の振り返りと同様に、意味付けや評価が有効となります。トキメキは何も未知の経験からしか得られないわけではありません。日常の生活でもポジティブに関わり意味づけることで行動に小さいながらも変化が生じます。例えばSNSで調べることが可能なことも場所が近いから現地まで行ってみる、すると近くによさげなランチの店を見つけたなど。これはちょっとしたトキメキになりそうです。未来に向けた不慣れな環境に身を置くように、日常に少し変化をつけることによりドライブがかかり、行動とトキメキのサイクルが回り出し、今が充実する。

 私がフリーランスになったのは、案外こうしたサイクルを求めたかったからかもしれません。キャリアにおいても人生100年の長さに甘えないで「今をしっかり生きていますか」これからも常に自分にそう言い聞かせたいです。