マンションは果たして持続可能か

日本の住まいを長らく支えてきた「分譲マンション」、1956年竣工で民間では第一号の「四谷コーポラス」に始まり、2021年末現在ストック戸数は約685万戸、約1,510万人が住んでいます。高度成長期には核家族化に伴う新たな都市型ライフスタイルの演出として、バブル期は投資(投機?)の対象として、低成長期も一戸建に比べ流通管理面と防犯安全面の優位性から一定の支持を得ていると言えます。しかし今その事業モデルが曲がり角を迎えています。建物と入居者の高齢化、手間のかかる維持管理、空き住戸の増加など不都合な現実が露わになってきています。
分譲マンションは建造物としての寿命を迎えると建て替えないといけませんが、これが一筋縄ではいきません。高い建て替え費用、再建築に係る法令規制、各住人の個別事情などが立ちはだかり、決議(意思決定)がなされず、一向に進まないケースもあるようです。その根本原因は「共有関係」にあります。区分けされた居住空間には独立した区分所有権がありますが、建物の構造上どうしても共用して使用するスペースである共有部分が発生してしまいます。
建て替えについては相続に例えると、相続人は区分所有者と考えると分かり易いでしょう。一般に相続のアドバイスでは、不動産を共有してしまうと管理や処分に相続人全員の同意が必要となるため、共有は回避するようお勧めします。住戸の数だけ権利者のいる分譲マンションは合意形成が難航するのは容易に想像できます。実際は区分所有者全員の合意でなく5分の4以上の賛成決議でよく、さらに政府内では4分の3や3分の2という要件緩和も議論されているようですが、いずれにせよ多数の同意が必要なことに変わりはありません。「四谷コーポラス」もいろいろ曲折はありましたが、比較的住民の良好な関係と新しい入居者の購入資金のおかげで2019年建て替えが実現ました。しかし現存のすべてのマンションがこのように上手くいくのか、甚だ疑問です。買取請求や売却(相続になぞらえれば放棄に当たる)によって共有関係から離脱もできるのですが、自分の思い通りの価格で買取や売却が成立するかは定かではありません。償却や毀損により財産的価値がほとんどなくなることもあり得るでしょう。
空き家についても一戸建てほどではないにしても、徐々に問題化しています。4月30日総務省発表の「住宅・土地統計調査(速報)」によると全国の空き家約900万戸のうちマンション、アパートの空き家率は16.7%とのことです。住宅全体でも長期にわたって不在で使用目的がない「放置空き家」の割合も36万戸増の385万戸になり、2003年からの20年間で1.8倍に増えたようです。マンションについても投資目的での所有も物件の築年数経過とともに入居者が決まらず、売却も出来ないといったケースが散見されるようになっています。

最近都心部で建築の進むタワーマンションについては、先述の問題点が将来より顕著にそして深刻度を増してくるように思えてなりません。所有者は背伸びした共働きのパワーカップルか富裕層の投資目的保有の比率が高いと思われますが、いつまで住み続けるのか。しかも住戸数が格段に多く、権利調整はより困難を極めます。大規模修繕のコストはさらに高く、また高層での修繕や建て替えについて技術的にも懸念があると聞いています。もし管理が杜撰で外壁が剥落したともなれば、周辺への迷惑どころか命に関わる大事故にもつながりかねません。現在は適度に需給が引き締まり販売が好調で、土地の高度利用と開発利益の極大化で開発者は潤っているようですが、数十年先建て替えも出来ずに朽ち果てていく巨大建造物は将来負の遺産になるというのは言い過ぎでしょうか。
人口減少が進んでいます。政府は少子化や外国人定住の対策に躍起になっていますが、減少傾向は数十年変わらないという予測統計もあります。決して持続的でない高層分譲マンションは必要でしょうか。一部地方都市ではコンパクトシティと銘打って駅前再開発にタワーマンション建設も進んでいますが、ここは都市開発も垂直思考でなく平面思考に発想を転換すべきではないかなと思うのです。昔ながらの長屋とまではいかなくても、互いの個の権利は尊重しながら、近隣・地域のコミュニティを活発にする人の心が通った真の街づくりが必要ではないでしょうか。人口減と共に単身世帯が増加し、デジタル化で孤独・孤立感がますます進む現代では尚更です。タワーマンションは変な階層ヒエラルキーを形成してしまうだけでなく、出不精による運動不足や社会的孤立でコミュニティ形成が弱まるとか、出産・育児にも悪影響があるという指摘もされています。「区分所有+共有」より「完全所有」の方が、良い意味で住まいのスクラップアンドビルトが少しずつ促され、街並みが社会環境に柔軟に変化し、結果持続的になるように思うのですが、いかがでしょうか。住まいは人の幸せな生き方の舞台であるべきです。個性を演出でき、世代年代を超えていける一戸建てもしくはせいぜい10戸程度までの小規模マンションといった街づくりの発想もあってよいと考えています。
